はるか昔の話から。


私がマンションに引っ越してきて、数年後に息子が産まれ、

その子が成長すると、部屋や廊下を走りまわり始めます。


当然、下階の住戸の奥様から苦情の連絡が入ります。

私はすぐに息子を背負ってお詫びに行きます。


するといつもは人前で泣きじゃくる息子が、

その奥様の前では不思議と泣きません。そのことを伝え、


『抱っこしてもらえますか?』とその奥様に息子を渡すと、

はじめはお怒りの奥様が次第に笑顔になり、


『子供を抱っこするのは何年ぶりかしら。私で泣かないなんで。可愛いわね』と顔が緩みます。


そして息子には奥様と会うたびにきちんと挨拶するように

しつけます。(誰にでも挨拶するのはいうまでもありませんが)


こうして隣人とコミュニケーションを取ることで、多少のやんちゃ坊主が

ドタドタやっても許容してもらえるようになります。

もちろん我が家としてそれに甘えることはなく、子供には音を出さないように育てます。



物心つかない子供に『音を出すな』と言っても難しいですし、

親がヒステリックになれば子供も歪みます。


大切なことは、音をゼロにすることではなく、なるべく配慮しながら、

一方で音を受け止める近隣の許容範囲を広げてあげることです。


そのためには『奥様の前ではなかない息子』という嘘も

ついて良い嘘だ、と私は思います。