長期修繕計画前回コラム「長期修繕計画じゃない、長期「修繕積立金」計画だ(1)]の続きです。

※コラム[長期修繕計画じゃない、長期「修繕積立金」計画だ(1)]はこちら


■長期修繕計画を「修繕工事のプラン」と捉え誤解させるマンション管理業界

長期修繕計画、という名称と、実際に管理会社から「長期修繕計画」の資料として精密な表やグラフを提示されると
  • 長期修繕計画は『修繕工事を行うための計画』なのかな。
  • 修繕工事を『いつ』『いくらで』実施するかの計画だよね。
  • 修繕工事の計画だから狂うことがないよう緻密に作るべき。
  • 長期修繕計画の作成は建築士などの専門家が作るから別途料金も納得。
と捉える方がほとんどです。
マンション管理や修繕の業界では「修繕工事プラン」といった趣旨で説明する方が多いですね。


■長期修繕計画を「修繕積立金のマネープラン」と理解した経緯

僕の捉え方は全く違います。次のような考え方でお客様へ説明しています。
  • 長期的に(ここでは向こう30年とします)、ざっくりといつ頃にどのような修繕を想定し、ざっくりいくら位かかるか
  • 30年間でかかる費用の合計(修繕工事費)がざっくりいくらか
  • 組合員から毎月徴収する修繕積立金の30年合計が、修繕工事費に対してざっくり足りているか
  • ざっくり「足りていない場合」または「総額では足りているけれど一時的に足りなくなる場合」に、その不足する修繕工事費を、毎月徴収する修繕積立金の値上げ額やタイミングをどうするか」
つまり、組合員の皆さんから集めている修繕積立金の過不足を見る「管理組合にとっての長期マネープラン」なのです。

マネープランと聞いて、僕が最も印象深かった類似の例として、生命保険会社が提案するマネープランを思い出します。
あれは27〜28才のころ、ソニー生命だったかな、プルデンシャル生命保険だったかな、、の営業マンから生命保険の勧誘を受けた時に、このマネープランの提示を受けました。


まず、僕は営業マンから以下のようなヒアリングを受けます。

仮に、僕の寿命が●年、妻の寿命が●年
仮に、僕の年収が●万円、生涯年収が●億円
仮に、僕は●才で結婚する
仮に、妻の年収は●万円
仮に、家族から●才で一人目の子供が、●才で2人目の子供が生まれる
仮に、子供が生まれたら妻の年収はパートで●万円
仮に、子供が二人とも小中を公立で、高校大学を私立に進学すると●万円
仮に、子供が●才で結婚すると結婚資金が●万円
仮に、家族が●才から国内旅行に年1回、海外旅行を4年に1回行くと●万円
仮に、僕が●才で定年退職すると、退職金が●万円
仮に、定年退職後の年金支給額が●万円
仮に、●才で病気になると医療費で●万円
仮に、僕と妻の葬式代やお墓代が●万円
仮に、毎月●万円ずつ貯金していく、、、

こんな感じで、営業マンは「生涯で得られるであろう収入」と「将来に起こる可能性のある主なイベントとそれにかかる支出」を僕からヒアリングしながら、ざっくりと想定・算出し、人生における収支を出します。
そして収支がどこかの時点でマイナスになった段階で「家計が破綻する」ことになります。

ざっくりとしたマネープランから、自分の人生において、どの時点でお金が厳しくなるのかを導き出します。
そしてこのマネープランから「深山さんからヒアリングした家族のライフプランだと、ざっくり●年後に●万円不足する計画になります」という話になり「●年後の●万円不足を今から予防して将来に備えるため、今のうちから■■保険に加入するといいですよ」と営業してくるわけです。

結局、僕はこの営業マンの勧誘は断りました。だって、僕の生涯年収や子供が何人生まれるか、どこに進学するか、いつ死ぬか、など全く予測がつかなかったし、そんなこと考えて生きていないし、なんだか自分の人生をこの営業マンに設計されているみたいで、右脳的に「いやだなぁ」と思ったからです。

その後、この「マネープラン」的な発想は、マンション管理業界に入っていく中で出会った「長期修繕計画」を見て「これはマンション管理組合にとってのマネープランなんだな」と理解しました。

(続く)


深山 州(みやま しゅう)
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