マンション 犬 猫 飼育 問題前回コラムはこちら。本コラムは続きです)

■理事会活動協力金制度の秘訣はここだ!

さて、理事会役員になってもらえるかどうかの意思確認をする時に重要なこととして

1.想定される理事会開催の曜日や時間帯を事前に伝える

2.理事資格者または代理出席者の範囲を拡大する

3.オンラインでの理事会参加も「出席扱い」にする


この3点を意思確認時に伝えて、理事会役員を受任しやすい環境を作る

というところまではご理解いただけましたか?



(ここから本題)
■理事会活動協力金 ルール作りのポイント
理事会役員を受任しやすい環境を作ったうえで、それでもなお役員を受任しない方は必ずいます。
この場合は「時間と体と頭で管理組合に貢献する(つまり理事を受任する)ことができない・したくない方」と判断し、理事会活動協力金を支払っていただく(つまりお金で管理組合に貢献してもらう)という事になります。(※前々回のコラム参照

この「理事会活動協力金」というルールを設ける際に、注意する点は次の通りです。

  1. 受任しない「理由」が何であろうと、理事会活動協力金は必ず徴収する
    理事会役員を引き受けない理由の多くが「仕事が忙しいから」「病気だから」「高齢だから」です。そのようなもっともらしい理由を聞くと『協力金を徴収するのはかわいそう・気が引ける』と情状酌量の余地を探し始めるのが人間です。
    しかしこれらの理由を客観的に証明すること(定量的に判断すること)は困難ですし、本当の理由か否かを調べることも困難です。管理会社に調べさせるのも本質的ではありません。

    よくある「理事会活動協力金を設定する際のダメなルール」として「高齢の方や病気の方は、理事を引き受けなくても協力金は支払わなくて良い」というものです。人間味があって温かなルールとも言えますが「不公平を助長するだけのルール」という事を忘れてはいけません。

    「理事会役員を引き受けない理由は『一切問わない』」もっと言えば『聞く必要が無い』です。
    仕事が忙しかろうが、体調が悪かろうが、単に「理事をやりたくない」であろうが、どんな理由であろうが、理事を引き受けないなら理事会活動協力金を支払って管理組合へ貢献する、という選択になるだけのことなのです。

    繰り返します。「理事を受任して、頭や体で管理組合に貢献しますか?」「理事は受任せず、お金で貢献しますか?」どちらかを選んでいただくルールにすることが重要です。理事を引き受けない理由は一切不要です。

  2. 理事会活動協力金は『貢献』であり『ペナルティ』ではない
    理事を受任する人=善、引き受けない人=悪、という考え方は改める必要があります。上述の通り「理事を引き受けて活動することで貢献するのか、お金で貢献するのか」というだけのことであり、「理事を引き受けないならペナルティを支払え」ではないのです。

    理事会活動協力金を「ペナルティ」という考え方で設定すると、理事を引き受けない方から反発が生まれますし、反発まで行かなくても、例えば「本当は理事を引き受けたかったけれど、どうしても家庭の事情で引き受けられない」「申し訳ない」と考えている方に『ペナルティ』として協力金を求められたら、わかっていても気持ちの良いものではありません。

    理事を引き受ける代わりに協力金支払いで管理組合へ貢献していただく、という考え方は、気持ちよく(あと腐れなく)受任を免除する「知恵」であり、マンション内の人間関係をぎくしゃくさせない「気配り」なのです。

  3. 理事を受任したけど理事会へ出てこない人には「協力金の後徴収ルール」を
    善意で作った「理事会活動協力金ルール」を、悪用する人がいないとも限りません。
    協力金を払いたくないために理事会役員を受任したものの、実際に会合へ出席しないような人がいても不思議ではありません。
    そこで、例えば「理事を受任したが、会合への参加が50%以下であるなど、実質的に理事の活動に参加していないと理事会が認めた場合は、協力金を当初から遡って徴収する」といったルールを追加しておくのです。

    この場合の「協力金」は実質的には『ペナルティ』ですね。

  4. 理事会活動協力金の金額設定は理事(住民)の肌感覚で決める
    「いくらくらいを設定すればよいですか?」と良く聞かれます。
    一番オーソドックスな回答は『本来理事会役員として受任する任期の期間(たいていは1年、または2年でしょうか)×2,500円』というものです。
    この2,500円というのは、理事会活動協力金の是非が最高裁まで争われた大阪市にある団地の事例ででた具体的な金額です。詳細はいろいろとあり、いろんな弁護士が事例紹介していますので割愛しますが、雑に要約すると『理事を受任しない人(受任する権利の無い人)に月額2,500円を負担させるのは、受忍限度を超えない範囲の設定である』という判決が出たのです。

    日本人は公的な前例が示されると、これにそのまま追随する人が多いので『裁判例が月額2,500円なら、うちのマンションでも同額の設定であれば文句は出ないだろう』となりがちですが、重要なことは『文句の出ない金額を設定すること』ではなく、あなたのマンションの組合員の平均的な収入(所得)を推測して、逆算して『程よい金額を設定する』必要がある、ということです。

    例えば、都心のタワーマンションで、組合員の多くが年収1,500万円以上のパワーカップルや企業の経営者、医者や弁護士などの専門職、上場企業の部長以上、芸能人、投資家などで構成されていると想像できるような管理組合で、理事会役員を免除するのに設定された理事会活動協力金が月額2,500円であれば、ほぼ全員が協力金を支払うことになるでしょう。このようなマンションでは、協力金の額は、月額3万、5万、10万を設定してちょうど良いかもしれません。

    一方で、首都圏郊外や地方で、給与所得者や年金生活者が多く暮らすマンションで、かつ築年数がかなり経過したようなマンションや団地では、月2,500円の設定が高すぎて『高負担』になってしまうかもしれません。

    設定金額が安すぎてほとんどの組合員が役員を受任しないのも問題ですが、設定金額が高すぎて(実質的にペナルティ的な感覚を持たれてしまって)仕方なしに理事を受任されても、毎回の会合に低いモチベーションで参加されては、理事会の議論が活性化せず、停滞した理事会運営になってしまうのも問題です。このようなマンションや団地では、月額2,000円、1,500円、、と低く設定することも考慮に値します。

    「実質ペナルティになるような高額な設定ではなく、協力金を簡単に払って理事のなり手がいなくなってしまうような安価な設定でもない、ちょうどよい金額を決める」ことが重要になります。そして、この「ちょうどよい金額」は、現役の理事会メンバーの肌感覚で決める、くらいがちょうどよい、というのが僕のこれまでの経験です。
    「裁判事例が2,500円だから、うちも2,500円にしよう」は、理事会活動協力金のルールを機能させるには短絡的な思考で安直すぎるのです。


以上です。考え方は概ね書きました。場合によってはもうちょっと細かくルールを作る必要がありますが、ポイントは抑えています。

タイトルにある『管理組合の理事を拒否する組合員がいる!』対策として、そしてこの課題を転じて、より良い理事会運営につなげられることを願っています。

(終わり)



深山 州(みやま しゅう)
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