現行の管理会社から、私が役員を務める管理会社(クローバーコミュニティ)へのリプレイス(管理会社変更)を検討される管理組合から、ほぼ100%尋ねられる質問に、

「クローバーさんでは『専有部駆けつけサービス』をやっていただけないのですか」
があります。

当社が作成する、現行の管理会社の見積金額と当社のそれとの比較表に、
ーーー
専有部駆けつけサービス
仝醜圈年額〇万〇千円
当社:年額0円(提案しません)
ーーー
と書いてあるのを、理事の方が気づかれるのです。

私からはに
「管理組合にとってよろしくないサービスと考えており、よほど契約を継続する理由がない限り、当社は提案しない」
「管理組合としてこのサービスに予算支出するのを廃止して、その分を修繕積立金に充てる発想のほうが、管理組合の利益になる」
と回答しています。

■便利そう?「専有部駆けつけサービス」とは?
簡単に言うと、専有部(お部屋)の中のちょっとしたお困りごと(室内照明器具の電球交換や家具のちょっとした移動・トラブル時の駆けつけ一次対応)について、管理会社へ電話すると、無料で(または一定回数無料で、あるいは割安で)提供してくれる「個々の居住者向けサービス」です。
なかなか便利そうなサービスに見えます。

■なぜ「専有部駆けつけサービス」に否定的なのか?
理由は次の通りです。
  1. 本来、受益者負担のサービスであり、個々の居住者によって利用頻度に差がある(一部のヘビーユーザーと、ほとんどの無利用者)にもかかわらず、サービス費用の支払いは管理組合(世帯数×月額〇〇〇円一律徴収)と不公平感が高いサービスといえる。
    管理組合のお金で個人の便益のために支出する、という発想はそぐわない。
  2. トータルでほとんど使われないサービスに管理組合の会計から支出することが無駄遣いと考えられる
  3. 個人的に同等のサービスを利用したい場合、代替案がある。
    ※例:クレジットカードについているサービスで代用ができる
     https://news.mynavi.jp/article/osusumecredit-22/
  4. そもそもこのサービスの成り立ちが「管理会社の利益ありき」であり、お客様(=管理組合)の立場に立っていない
専有部駆けつけサービス
■「専有部駆けつけサービス」は管理会社の「中抜きビジネス」
4.について掘り下げると、この「専有部駆けつけサービス」は、大手・中堅の各管理会社が「管理組合に対し管理委託費の値上げ要請ができないどころか減額要請が続いていた平成のデフレ時代」に、彼らの新たな収益源として「専有部(居住者)のお役立ち」という立て付けで、自社管理物件に一律提案したものです。

そして、このサービスの売上は、ざっくりと
管理会社:元請けとして売上の50%
専門業者(専有部サービス会社):下請けとして50%
となります。
管理会社は右から左へと仕事を流すだけで中間マージン(純利益)を増やす、まさに「ザ・管理会社」のビジネス構造です。
まさに私たち(クローバーコミュニティ)が企業理念に入れている「中間マージンの排除」と相反するサービスなのです。

簡単に計算します。例えば、5,000管理組合(1管理組合当たり50戸平均)を受託している管理会社で、この専有部駆けつけサービスを世帯当たり月額220円(原価率50%で110円)で提供している場合、管理会社が得られるマージンは、

5,000組合×50戸×110円×12か月=年3.3億円となります。
このサービスは、実際の作業は下請け業者ですので、この3.3億円は、ほぼ純利といえるでしょう。

総戸数50戸のマンション管理組合から見ると、
50戸×220円×12=年13.2万円、30年で400万弱の支出になります。ちりも積もれば結構大きいと思いませんか?

■なんとなく契約しているなら、即解約すべき
このサービス、実態は「サービスの存在を知らなかった」居住者がほとんどです。
管理会社は、サービス提案資料を丁寧に作っていますが、契約後に居住者へ積極利用を促進するわけでもありません。

なぜか?
多数の居住者が沢山利用すると、下請け業者の出動が増え、利益を圧迫し、下請け業者から元請けである管理会社へ「値上げしてくれないとサービス提供ができない」となります。
つまり、この手のサービスは「ユーザーにとっては便利だけど、提供者にとっては、できれば利用して欲しくない」ということが言えます。

ネットフリックスやAmazonプライム・applemusicのような「多数のユーザーがヘビーに使い放題でもサービス提供側の支出が変わらない」インターネット系サブスクリプションサービスとは違うのです。

管理会社からの営業提案に、なんとなく「便利そう」「もしかしたら使いそう」と契約を続けるのはもったいない。即解約して、管理費会計のストックにするなり、修繕積立金を充実させるなり、管理費徴収額を減らすなりすることをお勧めしています。

■積極的に契約を継続するマンションもある
私はこの専有部駆けつけサービスを全否定していません。多くの居住者がこのサービス内容を正確に理解して、このサービスの存在を常に認知できる状態にしておき、多数の居住者がたくさん使ってくれれば、管理組合として負担する意味がある、と言えます。
居住者の高齢化が進むマンションでは、ちょっとした力仕事や高所作業は自分では困難ですから、むしろかゆいところに手が届くサービス、とも言えます。

この専有部駆けつけサービスは、保険商品のように「一部の利用者のために多数の無利用者からの掛け金で成り立たせる」ビジネスと言えます。動機は管理会社の純利アップだとしても、管理組合にとって「支え合いの一環として利用する」という考え方もできるでしょう。

私がコンサルタント(メルすみごこち事務所)としてマンション管理士を派遣する某大規模マンションでは、「一部の高齢者にとっての利便性を、多くの現役世代住戸が支える」という考え方に行きついて、実際の利用者や利用率が低くてもこのサービスの維持を決断しています。

これはこのサービスの「良い使い方」です。ちゃんと仕組みをわかっていて、それで積極的に活用するのは素晴らしいことです。


しかしこのようなポリシーをもってサービスを活用しているマンションは稀です。
お金を支払う管理組合(理事会)が、このサービスの仕組みと明確な活用イメージ、特定の居住者の利用に偏っても受容できる理由を持っておらず「管理会社から提案され、なんとなく良さそうに感じ、管理費会計も赤字でないから」みたいな理由で契約しているのなら、無駄なサービスです。

いま高頻度で利用している一部の居住者には申し訳ない気持ちを持ちつつ、あくまで「管理組合全体の利益」の視点で書いています。
クレジットカードのサービスで似たようなサービスがついているものもありますので、もし管理組合で専有部駆けつけサービスを解約することになったら、検討してみてはいかがでしょうか。

深山 州(みやま しゅう)
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