『マンションの防犯カメラを6年間リースしたうえで、さらに8年も再リースを継続した』
すごい&こういう選択肢もあったんだ!と感動+共感した話。


東京都品川区にある「プリオール西大井管理組合様」は、管理会社を当社(クローバーコミュニティ)へリプレイス(管理会社変更)してくださった、小ぎれいで清潔な小規模マンション。西大井駅からほど近いのに閑静な住宅街に佇んでいて、とても落ち着いた雰囲気。
プリオール西大井

当時、最初のお問い合わせをいただき、マンションへ。理事さんご夫妻から、管理会社変更を検討するに至った背景や現在の状況を教えていただくうちに、僕が刑事コロンボのように根掘り葉掘り質問攻めをしてしまい、理事会活動など管理会社変更以外の様々な話を色々と教えていただいた。

この話の中で、表題の『防犯カメラを6年間リースしたうえで、さらに8年も再リースを継続した』という話をお聞きしたのだ。

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平成以降に分譲されたほとんどのマンション管理組合には、新築時から防犯カメラが数台〜規模によって数十台設置されている。分譲主が設置し、ほどんとが『リース』で導入し、引き渡し後(管理組合設立後)に管理組合へ契約当事者の地位を引き継いでいる。

リースとは、防犯カメラを管理組合が購入するのではなく、リース会社が購入し、リース料を乗せて管理組合へ賃貸する契約である。
支払いは割賦(分割払い)で、防犯カメラの場合、契約期間は多くが6年(72回払い)。満6年が経過する(分割払いが終了する)と、毎月の支払いは終了するが、7年目以降も継続して使用したい場合、1年更新で再リース(継続賃借)することができる。

この再リースの料金は、1〜6年目までの月額料金の12分の1と『格安』。
リース会社はリース期間である6年の間に利息を得て資金回収が終わっているので、7年目以降は管理組合が再リースを選択して割安な料金へと変更しても、十分に利益がでるためだ。途中でカメラ機器が壊れても補修や取り替える義務はないので、管理組合からみて『格安』といえども、リース会社にとっては理屈で言えば「粗利100%」のありがたいビジネスな訳だ。


ただし、再リース(継続)する防犯カメラは6年前に導入されたもの。6年の間に機器が劣化している可能性があり、また技術革新により機能(録画時間や録画画質など)に優れた新商品が出ている可能性が非常に高い。

防犯カメラ会社、またはカメラ会社からリベート(紹介料)を得ている従来の管理会社からは、リース期間の満了が近づくと、『7年目に新しい機種への切り替え(新たに6年のリース契約締結)』または『再リース契約を締結(現行の機器のまま継続)』かのいずれかを提案してくるが、防犯カメラ会社や管理会社は『新規で新しいものを購入してもらったほうが商売になる』ため、前者を基本線として提案してくる傾向にある。


ここで多くのマンション管理組合も前者で進めることになる。
このとき、理事会の判断基準は、

  • リスク回避(再リースで古い防犯カメラを維持して途中で故障し、いざというときに映像が録画されていなかったらカメラ導入の意味がないし、カメラが故障中に犯罪行為があり現場が録画できていない場合、再リースを選択した理事会に責任が発生することは避けたい)
  • 変わらないリース料(家電製品と同様に、カメラやハードディスク(記録媒体)の価格自体が時間と共に下がることから、スペックが良くなりつつリース料が変わらない(または若干でも下がる)なら新たなリース契約の方が得であろう)
となる。


しかし、ブリオール西大井管理組合では『7年目以降は再リース』を選択した。
しかも、その後は1年毎に更新し、8年間も継続!

つまり6+8=15年もカメラを使い倒したことになる。


この話を理事さんから聞いた時は驚いたが、帰り道でよくよく考えてみると、次のような「ダメージコントロール」の観点で、一つの合理的な判断だと考え直した。
  • そもそも防犯カメラはテレビやビデオ、冷蔵庫どの家電製品と同じ機械もので、6年経ってすぐに壊れるものではないであろう(プリオール西大井さんが僕の中で一つの好事例となった。)
  • 防犯カメラ導入の目的の半分は『外部者に対する抑止力』であることから、たとえ再リース期間中に機器が故障し復旧させるまでの間にカメラ映像が録画ができなくても、「抑止」という役割は継続して果たしている。
  • そもそも防犯カメラの録画映像を閲覧する(つまり実際に不審者による犯罪や館内侵入が起こる)頻度は非常に低く、再リース期間中にカメラ機器が故障しても、新しい機器へ入れ替えるまでの間に犯罪等が起こる確率は、交通事故で死亡するくらいの非常に低いものであろう
そして、
  • 最後は「非常に低い確率で発生するであろう犯罪や事故の録画機会を逃さないために、常に高額で高性能な防犯カメラ機器(体制)を維持するためのコスト」と「小規模なマンション管理組合として安定的な財政を考慮したコスト節約」との見合いであり、後者のポリシーを区分所有者が共有しておけば良い
ということになる。

「防犯は重要」「万が一壊れたら」という「なんとなくの安心感やリスク回避」を求めて、ランニングコストの見直しを盲目的に放棄する前に、僕たちはコンサル型を目指す管理会社として冷静な選択肢を提示することの大切さをプリオール西大井管理組合様の取り組みから学んだ。

ランニングコストは「チリも積もれば山となる」。
この業界に何年いても、日々新たな学びがある。


深山 州(みやま しゅう)
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