「理事会は『中立・公平』であるべき」
言葉だけ見れば、全くその通りです。
私もそう思いますし、多くのマンション管理士や管理会社・専門家の方がそう言っています。
ところが、「合意形成」「対話」「理事会の中立・公平」も時と使い方を間違えると、とんでもないことになります。
管理組合の運営ストップしたり、理事会が非難されたり、組合員の間で反目が生まれたりします。
先日あった話。
あるマンション管理組合で、大規模修繕工事の進め方をどうするか、真剣に検討していた理事会がありました。
管理会社への責任施工方式とするか、コンサルタントを入れて設計監理方式を採用するかで決めかねていました。
※大規模修繕工事の設計監理方式や責任施工方式についてはこちら!
それぞれの方式で考え方や進め方・メリットやリスクが異なる上に、業者のいうことも様々。
当社も一業者として言いたい放題の提案を出しました。
その後に理事会が総会へ上程した議案(コンサルタントを採用する方式)について、総会の場で参加者から様々な意見がでて、保留となったそうです。
当社が選ばれる・選ばれない、はここではどうでも些末な話。
理事会様からのメッセージに、こうありました。
「現状の組合員理解の状況において決をとるのは、難しい(中略)今後の進め方については、新理事会で検討を行います。住民コンセンサスを得られていない状況ですので、住民説明会などの企画を(以下略)
誠実に、丁寧に進められただけに、理事会の皆さんは総会後にドッと疲れが出たのではないか、、、と想像に難くありません。
○理事会が管理組合内部の合意形成を図るプロセスは、大きく2つ
ひとつは、理事会がゼロベースで中立の立場を貫き、最後まで組合員の声に耳を傾け、総意を目指すパターン。
「中立公平案」としましょう。今回の理事会様はこちらのスタンスで臨んでいました。
もうひとつは、理事会が「これが良い」というベター(ベスト)な一つの案を追求したうえで、組合員へその一つを提案するパターン。
「理事会主導案」としましょう。
「中立公平案」のメリットは、
・住民の総意を最後まで追求するゆえに、理事会の透明性を確保できる
一方で、リスクは、
・賛否(または複数提案の票)が拮抗した・意見が割れた時に、まとめきれなくなる
・まとめきれなくなるがゆえに、合意形成に時間がかかるか、先送りになるか、中止になりやすくなる
・時間がかかるリスクが、住民間の不信感や対立を助長するリスクへと繋がる
「理事会主導案」のメリットは、
・理事会が一つの案を上程し、組合員はそれへの賛否となるので、賛否いずれにしても結論が早い
一方で、リスクは、
・理事会の検討プロセスにおいて透明性や厳格性をもち、こまめに組合員へ検討プロセスや考え方を開示しないと、理事会に対する不信感を生みやすくなる
・どうしても反対の意見がでてくるので、一時的に理事会が非難される可能性がある
このような仕分けになります。
○「中立公平案」は下手すると「何も決められない案」だ
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